読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

わかったつもりでいたけれどほんとうはわからなかったこと。

読書。独学ヨガ。ミニマリズム。わからないことだらけ。

「すでに起こってしまったこと」「これから起ころうとしていること」ねじまき鳥クロニクル 第一部 泥棒かささぎ編ー村上春樹著

村上春樹 本の感想

 

f:id:coyote0801:20150128001650j:plain

 

 村上春樹作品では、この「ねじまき鳥クロニクル」が一番好きで何度も読んでます(写真は私物の文庫ですがもうぼろぼろ・・・)

 

   村上春樹はプロットを作らないらしいです。冒頭の情景描写がふと思い浮かび、そこから話を膨らませていくのだとか。

  

本作も、穏やかな昼下がりに主人公がスパゲッティを茹でている(村上春樹の小説の主人公は気づくとスパゲティを茹でますねー)ところに、知らない女から謎の電話がかかってくるという日常の些細なシーンから始まったと思いきや、いつの間にやら過去の戦争の因果や、巨大な邪悪な存在に巻き込まれ、それにひとり立ち向かっていくという壮大な物語が、文庫本3冊にわたって紡がれるわけだから、本当にすごいと思います。

 

 本書は序章なので、これといった大きな事件は起こらず、主人公の日々の暮らしや、周囲の人たちとの関係が淡々と描かれます。「水の組成」「ノモンハンの戦争」「痛覚を失った女」といった謎ワードも出てきて、読む人によっては「この小説は一体どこに向かってるんだ?」と退屈していらいらするかもしれません。

 

 たしかに、目を見張るよう山場は無いんです。

 

その代わりに、

 

「これから起ころうとしている大きな厄災を示唆する小さな予兆」

が、話の端々にひっそりと顔を出し(飼い猫がいなくなったり、妻の帰りがたまに遅かったり、近所に水の涸れた井戸を見つけたりです)その描かれ方がなんとも不気味で、不吉な空気感がこの一冊の中に横たわっています。

 

僕はこのじっとりとした空気感こそが、この第一部の魅力だと思っています。

 

僕にはその出来事が妙に気になった。まるで喉にひっかかった魚の小骨のように、それは僕を居心地悪くさせていた。〈それはもっと致命的なことであったかもしれないのだ〉 、僕が考えたのはそういうことだった。〈それは致命的なことであり得たのだ〉。あるいはそれは実際に、何かもっと大きな、致命的なものごとの始まりに過ぎないかもしれないのだ。

 

人って「すでに起こってしまった事実」にたいしては、喜んだり、悲しんだり、動揺したりとわかりやすい反応を示すのだけど、「これから起ころうとしていること」にたいしては、あまりに無防備ではないかとよく思います。

 

事件や事故が「起きてから」やっと重い腰をあげ、せかせかと事態の収拾にあたるパターンがほとんどで、「起きないように予防すること」って軽視されがちだなあと。

ニュースなんか見てると「なんかこのままいったらヤバいことになりそうだけど、細かい修正かけるのもめんどうだし、とりあえず問題が起こったら対処するか」って思考停止に陥ることで発生している問題も多い気がします(部屋にゴッキーが発生してやっと掃除に専念したり、虫歯が激痛になるまで歯医者に行かなかったり、「ほったらかしにする恐ろしさ」は個人単位でもたくさんあると思います・・・)さらに、

 

かまうもんか、と僕は思った。何かが起こりたいのなら、起こればいい。

 

  これはちょっとゾッとしますね。この主人公の言葉みたく、「こんな不快な状態は一度クラッシュしてしまえばいい」という終末観というか希死概念は、じつは多かれ少なかれ誰もが内包しているものなんじゃないかと思うことがあります腐ったものに蓋をしたまま、その中身は二度と見ようとはせずに、ゴミとして捨ててしまうようなものです。一体なんなんだろう。すべてをゼロにリセットするのって気持ちいいんだとDNAにでも組み込まれているのでしょうか?創ることより壊すことのほうが簡単だから?人間は創造と破壊を繰り返しながら前に進んでいく生き物なんですかねえ・・・。

 

 理想かもしれませんが、身の回りの小さな変化を察知し、自分なりに分析して、こういうことが起こりそうだ」という仮説を立てられれば良いなと思います。すると「そのときどう行動すればいいか」がわかってくるし、現状を手直しして、最悪の事態を回避できるかもしれません。そういう「第六感的なもの」って原始時代の人たちは絶対持ってたと思うんですけど都市化と情報化が進み過ぎた今の世界では失われていて、その感覚を取り戻すうえでも「ミニマリズム」はひとつのヒントになるんじゃないかと思っています。

 

 続編の2部と3部についても今後書きたいと思います。 

第2部の感想も書きました!⇩

自らの意志で捨てたもの 誰かの手によって失われたもの 「ねじまき鳥クロニクル 第二部 予言する鳥編」村上春樹著 - わかったつもりでいたけれどほんとうはわからなかったこと。