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わかったつもりでいたけれどほんとうはわからなかったこと。

読書。独学ヨガ。ミニマリズム。わからないことだらけ。

清貧という言葉は死んだんだな。たぶん。 「日本人の精神と資本主義の倫理」 波頭 亮 茂木健一郎著

本の感想

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脳医学者の茂木健一郎さんと  経営コンサルタント波頭亮さんの対談本。
お二人がかなり「怒り」ながらズバズバ語ってくれる。
僕はこの本を読んで、物心ついた頃から(大げさたけど)抱いていた日本という国にたいする、つかみどころのないモヤモヤとイライラが一気に明確になった。言語化してもらえた感じ。
 
 
茂木さん
隅さん(建築家の隅研吾さん)は「負ける建築」と称して、周囲の環境に完全に溶け込んで存在が見えなくなってしまうくらいの建築を理想としている。《中略》つまり、自己を声高に主張するのではなく、自分が置かれている環境の限界、あるいは制約を積極的に引き受けた上で、自己主張を考えれば、自然に調和してくるわけです。そのような視点から今の東京の景観を見れば、これは自我剥き出しの、まさに大衆というバケモノのあり方を示しているのではないかと思います。
日本橋を描いた浮世絵なんてじつに美しいけれど、つまりは描きたくなる風景だったわけです。今の東京を誰が描きたいと思いますか?よほど酔狂な人か現代美術の手法でシニカルなアプローチをする人なら別ですが、新宿歌舞伎町の雑踏が描きたくなる風景ですか?
「個性出してなんぼ」の精神は日本の都市建築にもあらわれている。スカイツリーも大阪梅田のグランフロントも、一つ一つ見れば非常に立派で、ランドマークとしての役割を果たしていると、ある意味では言えるかもしれないけれど、その一方で失われている景観が確実に存在する。
魔女の宅急便」のような街並、整然と立ち並ぶ団地の風景、そういうのが好きだなと思う。
 
 
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こんなのとか、
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こんなの。
 
ファッションにおいても、例えば「量産型大学生」と揶揄されたりするけれど、逆に若い人みんなが奇抜な服ばかり着てたら、それはそれで「個性出しすぎ」「自己主張し過ぎ」と嘲笑する人が出てくるだろうし、今の若い人たちは、
「思い切って個性を出した時の面倒くささ(自分が奇抜な格好する行為そのものでなく、それに対する周囲からの過度な反応)」を敏感に察知してるんじゃなかろうかと思う。僕は33のオッサンなので20歳の本当のところはわからないけれど。
 
今、ノームコアやUNIQLO全身コーデが流行るのは、
「自我剥き出しの個性アピールよりも、優先してやらなきゃいけないことが私たちには沢山あるんだよ」という個性賛美主義にウンザリした人たちの思いが、少しずつ表面化してきているからではと、なんとなく思った。問題は調和の美しさを保ちつつ、何をやるかってことかもしれない。
 
養老孟司さんが本で言っていた、
「何もない平地に勝手に山を作って旗立てて、『これ素敵でしょう?必要でしょう?』とアピールする起業家のなんと多いことか。平地に空いてしまった穴を埋めることで、皆が歩きやすくなる行動こそ本当の仕事でしょう」みたいな言葉を思い出した。
 
 
茂木さん
女性誌を見ると、セレブなるものに異常な憧れを持っていることが分かる。自分はセレブと関係ないと思うのではなく、「なぜ自分はパリス・ヒルトンではないのか?」と問うような、いろいろな人と自分とを引き比べるメンタリティがとても加速しているように感じています。
 

波頭さん

日本には成金という言葉がありますね。「所詮あいつは成金だから」と昔は馬鹿にした。しかし、今は皆が皆、成金になりたがる国になってしまった。
メディアは絶え間なく煽ってくる。年収が高ければ高いほど幸せだと。
「清貧」という言葉は死んだんだな。たぶん。
 
 
波頭さん
アンフェアな企業の手先になるような仕事は選ばなくとも、頑張りさえすれば、毎日きちんと生活することができる。そういう働き方と生き方の実態モデルになりたいと思っているからなのです。皆が思うほど儲けていないけれど、それでも飯は食えるし、好きな時計くらいは買える。クルマだって持てる。もちろん、そのためにはがむしゃらに金儲けをするのとは別の意味で、必死に頑張らなければならない。《中略》長いものに巻かれて、悪代官の手先にでもならないと飯なんか食っていけないと思ってしまったら、終わりです。そうではないということを、自分のケースで証明したい。それが僕の社会貢献だと思っています。
何の仕事をしても、普通に働けば、飢えたり凍えたりする心配はなくなっているから。だから、科学的真理でもいいし、人間としての誠実さや勇気でもいい、ボランティアでもいい、人間の心が本能的に持っている普遍的な価値に、自分の労力や時間を費やした方が必ず幸せになれると思います。使い切れないほどのカネを蓄えても、幸せにはなれない。
理想論に聞こえるかもしれないけれど、最もお金にまみれたコンサルティングの現場で、何よりもお金を大事だと考えている人々と日々働いている波頭さんの言葉だからこそ説得力があった。
 
茂木さんが好きなので、何気なく手に取って読んだけれど、目が覚めることだらけの内容でした。