わかったつもりでいたけれどほんとうはわからなかったこと。

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【本の感想】それからはスープのことばかり考えて暮らした 吉田篤弘

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久しぶりに小説を読んだ。

とにかくタイトルが良い。

CDの”ジャケット買い”ならぬ、小説の”タイトル買い”をしてしまうのはこういう本なんだと思う。

図書館で借りるのではなく、

中古でもいいから買って、所有して、部屋の本棚に並べたくなるような。

たとえ再読することがなかったとしても、ただ本棚に並んでいるだけで意味を持つような。

そんな本。

「そこにあるだけでじゅうぶん」

人生にはそう思えるだけで解消できてしまうモヤモヤがたくさんあるはずなのに、多くを望み、生き急いでしまうのが人間というやつのようです。

 

昔の時間は今よりのんびりと太っていて、それを「時間の節約」の名のもとに、ずいぶん細らせてしまったのが、今の時間のように思える。

効率化してせっせと時間を捻出しても、上手な時間の使い方を知らないから消耗し、また時間が足りなくなって……そんなくりかえしが、妙にセカセカした今の世の中を作ってる気がする。

「夢」や「目標」という言葉は聞こえはいいけれど、周りの忙しさに置いて行かれないために、無理して設定してしまった理想は、歪んだ妄想とたいして変わらないのかもしれない。

 

あのね、恋人なんてものは、いざというとき、ぜんぜん役に立たないことがあるの。これは本当に。でも、おいしいスープのつくり方を知っていると、どんなときでも同じようにおいしかった。これがわたしの見つけた本当の本当のこと。だから、何よりレシピに忠実につくることが大切なんです。

ほんとに素敵なことは目の前にある。例えば手作りの美味しいスープ。そしてそのレシピを知っていること。自分で作れること。誰かに作ってあげられること。

遠くにある理想のビジョンが今はまだぼやけてよく見えないなら、無理に生き急ぐことはない。

目の前に立ち上るスープの湯気と匂い。

それだけは疑いようのない生ぬるく、あたたかい現実。

「ごちそうさま」をするまで、とりあえずはあなたのもとから離れたりしないのだから。