わかったつもりでいたけれどほんとうはわからなかったこと。

読書。独学ヨガ。ミニマリズム。わからないことだらけ。

【本の感想】ブランドのデザイン 川島蓉子著

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企業のロゴマークや商品のパッケージデザインの由来を知るのはけっこう好きで、気になって読んで見ました。読んでみると、企業におけるブランディングという大きな話にかぎらず、自分がこうやって書いているブログや、ツイッターやインスタグラムで個人が発信するときのコツみたいなものがたくさん書かれていました。べつにプロブロガーだとかアフィリエイターだとか、収入を目的にやっている人に限らず、趣味で自分の情報を発信している人も、「もう少し工夫してみようかな?」といろいろ発見がある一冊です。

 

 「ウーロン茶」の広告で、「ウーロン茶はおいしい」とか「ウーロン茶は身体に良い」といったような、商品の優位性を伝えるものは決して多くない。それよりも、「ウーロン茶」の故郷である中国ー近くて遠い国における人の有り様を描いている広告がほとんどであり、それによって、「ウーロン茶」を取り巻く世界観を伝えている。(71ページ「ブランドはお客様の頭の中にある連想を広げること」より) 

 商品そのものではなくて、それを買うことで自分の生活がどんなふうに彩られるか。どんな楽しい気持ちになるか。そういった目に見えない「気分」とか「雰囲気」というものは思った以上に大切。人の心が動く=「欲しい」と思うときってそういう瞬間。細かいスペックを気にしたほうが良い場面もあるけれど、そこはある程度慣れちゃうし、スペックを気にして買い物してばかりいるとこれまた疲れる。他にも、「キューピーマヨネーズ」が、マヨネーズをいっさい映さず、野菜だけを登場させた広告の例も書かれています。マヨネーズという高カロリーの食べものをヘルシーにプロモーションするってやっぱりすごい。

 

奇抜なファッションに身を包んだタレントが、ありえないシチュエーションを演じる。現実味がまったくない景観の中に、端正この上ない佇まいで商品が置かれている。可愛らしさや甘い雰囲気を前面に出して、妙に女性に擦り寄ってくるーそんな広告を目にすることが多いのだ。(111ページ「宣伝は資本である」より) 

「若い人に車が売れない」とよく言うけれど、車のテレビCMを見ていると、「はなから若い人には売る気なんてあまりないんだろうな〜」という気持ちになってしまう。CMの中では、40〜50代のダンディな男性が夜の都心のハイウェイを高級車で疾走し、あるいは、子どもが2〜3人いるファミリーが大きなワゴンでキャンプに出かけたりする。あまりに現実とかけ離れている(あくまで僕の現実とだけど)「共働きの子なし夫婦が、何ヶ月かぶりに同じになった休みの晴れた日に、目的の場所もなくフラッと小さな軽に乗って出かける」そんなCMだったら心動いてしまうかもしれない。「これはいったいどこの世界の話なんだ?」ではなく、「これは僕の世界にも起こりうるかもしれない」そう思わせられるとき人は「欲しい」「買いたい」と思うんだろうな。そう考えると、ユニクロのテレビCMや無印の広告は「ほぼ全てに人に起こりうるであろう物語」を発信してるんだよな。

 

情報が豊かになったと言われているが、実際は知識のスローイングとキャッチングを繰り返すだけで終わっている。そうではなくて、情報の受け手を、さらに活発な思考へと導く、つまり脳を連動させることが情報の本来の力であるはず。したがって「知らせるのではなく、いかに知らないかを分からせる」というコミュニケーションの形(254ページ「情報を未知化する」より

 前回紹介した長田弘さんの「読書からはじまる」でも印象に残っている「読んだ本、読むべき本よりも、”読まない本”が存在することの大切さ」に通じるんじゃないかなあ。内田樹さん的に言うと「知性が活性化する話」。

なんというか、「ほんとうに良い情報」って、すぐに頭では理解できなくて、「実際に身体を動かして確かめなきゃわからない」ものなんじゃないかな。「買って、確かめたい!」という気持ちこそが真の購買欲。カルチャーやムーヴメントだって、人間の身体があちこちにリアルに動くからこそ起こるわけで。

 

”シンプル”ということについて原氏は、「シンプルの品質は思考の総量が決める。ただ単純なのではない。同じシンプルでも、考え抜かれたシンプルかどうかが重要」という。幾何学的に簡素であるというだけではなく、それが「多様なイメージを一身に受けとめられる容量の大きな器として機能するかどうか」。(256ページ「品質は思考の総量が決める」より)

「考え抜かれたシンプルかどうかが重要」……痛い言葉だなあ。「僕がやっているのはしょせん、貧困ゆえのミニマリズムなのか」この問いに果たして答えは出るのでしょうか。

 

 読んだのは文庫版ですが、文庫はどうやら在庫薄のようです。実際の広告ポスターなどもたくさん引用されてるので単行本でも読みたいかも。