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わかったつもりでいたけれどほんとうはわからなかったこと。

読書。独学ヨガ。ミニマリズム。わからないことだらけ。

【本の感想】いつもの毎日 松浦弥太郎著

本の感想 断捨離 ミニマル化

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今でこそ、お気に入りのモノ紹介がSNSやブログでたくさん発信されている(ぼくも例にたがわず)けれど、この方はそういうものの元祖と言ってもいいかもしれないな〜。

ともすれば、モノ自慢におちいりがちなモノ紹介だけど、この方の文章はふしぎと引きこまれるのです。なんなら「さて、自分もブルックスブラザーズの白シャツを買ってみようか‥‥。」などと思わせられてしまう。

 

まず、「シャツ五枚、ニット三枚、パンツ五本、ソックス一〇足」というようにワードローブのキャパシティを決めます。次に、「シャツの袖口がすれてきたら、同じものを一枚買う」という具合に、どんなときに何を買うのか、買い物計画をあらかじめ決めます。(69ページ「値段とファストファッション」より)

 こういう基準はほんとたいせつだなあ。もっと少なくてもいいんじゃない?とついつい思ってしまうけれど、ある程度の数があったほうがローテーションできて洋服も長持ちする。ここ数年、断捨離とミニマリズムの名のもとに減らすことばかりやってきたけれど、良い状態で長く着ることを考えればもう少しストックを増やしていいのかも‥‥などと思ってる。たいせつなのは、自分が心地よく守れるくらいのルールをもうけること。

 

「二〇万円のテーブルなんて考えられない」という人が、一〇万円するブランドバッグを平気で持っていたりするのは、どうにもバランスを欠いています。バッグを持って出かけるのは週に数回でも、テーブルは毎日、接するものです。(92ページ「テーブルと椅子」より)

「 使用頻度の高いモノこそこだわりの一品で」この考え方もやはり大切。一日中本を読む人なら一〇万円の椅子だって高くないんだな、きっと。そしてミニマリストの場合、 

 

所有物が少ない→限られた持ちものすべてが毎日のレギュラーになる→毎日使うものだからとすべての所有物をこだわりの一品でそろえ始める‥‥

 

‥‥こういう流れになることがあり、僕もこれまではそうあるべきだと思っていて実践していたんだけど、ふだんの生活において、すべての持ち物がこだわりの一品でバシッと決まりすぎているのも、ちょっと息ぐるしいかもなと最近感じるようになった(これはけっこう大きな気持ちの変化だ)

同じ毎日がずっと続くように思えても、人生には小さな変化やメリハリ、彩りがある。仕事での勝負どころや大事な人に会うハレの日もあれば、コンビニに唐揚げ買いに行って家でダラダラ昼寝したら日が暮れる日もある。そんな日々のグラデーションによって使い分けができるくらいのモノは所有していいのかもな、と思い始めたわけです。

 

これしか持たない、使わないという意味ではなくて、その時に自分が好きなものこそ自分にとっての定番になるんだということ。でも、時間が経って変わることもあるし、僕の中にも矛盾はあります。(184ページ 菊池亜希子さんとの対談のなかで)

松浦さんのような、モノへのこだわりを極めたような人でも矛盾はあるんだなあと。「これがわたしの定番」とひとつ決めてどんとかまえたい気持ち、それはときとして、あふれかえるモノと情報から耳をふさいで安心するための常套句になってしまうこともある。「このブランドこそ自分にぴったり」と一つのブランドで買いそろえれば気分も一新、とてもすっきりする。僕も二〇代のころブーツが大好きで、レッドウイングやチペワを2、3足そろえて「よーし、一生ブーツでいこう」なんて息巻いていた。でもそれは一時期の思いこみだった(気づけばシンプルな革靴しかはかなくなっている)自分がこしらえた「ブーツが最高というイデオロギー」に自らが取り憑かれていたのだと思う。

たいせつなのは、

「ぼくは〇〇が好きだ!(今はね)」

という、この(今はね)というカッコ内の柔軟な気持ちのあり方なのかな。ドライにきこえるかもしれないけれど、変化するからこそ、そのときそのときに好きなものにまっすぐ向かっていく。そのうえで、そんな「お熱になっている自分」をすこしでも客観的に見ることができれば、「変化していく過程」もふくめて楽しめるんじゃないだろうか。松浦さんの文章の魅力は、「自己矛盾」を肯定しているところにあるのかもしれない。

 

本書では他にも、上質の白シャツは「アイロンかけ→フォーマルな場」「あえてのちょっと皺あり→普段着」「腕まくり→夏に半そでの代わり」と多様に使い分けができる話や、「何年も同じコートをきれいにたいせつに着ている人」を見ると嬉しくなる、といったすてきな話がたくさんでした。