宇多田ヒカル『初恋』一曲目の歌い出し「傷ついた時僕は一人静かに内省す」という歌詞について思ったこと

デビュー20周年の今年6月にリリースされた新盤『初恋』の一曲目、「Play A Love Song」の歌い出しで彼女はこう歌っている。

 

傷ついた時ぼくは1人静かに内省す

 

日常生活の中で何かに傷ついたとき、多くの人は誰かに愚痴ったり、誰かと飲みに行ったり、誰かに八つ当たりしたり(これはだめですけど)そういった自分以外の他者と接することで忘れたり癒したり紛らわしたりすると思う。

1人静かに内省する人たちはあくまで少数派なのだ。そもそも、傷ついたときに「一人静かに内省す」のだから、その人が傷ついてるかどうかすら周りの人間にはわからない、気づかれないこともあるだろう。そんな少数派の人たちが発する「声なき声」にたいして、もっと言えば、「自分の気持ちを本当は誰かに聞いてほしくても、環境や性格、さまざまな事情によって一人で抱え込まなくてはいけない、そんな孤独を抱きながら生きる人たち」にたいして、国民的歌手であり音楽家である彼女は、デビュー20周年を記念したニューアルバムの一曲目、それも第一声で「僕もそうだよ」と歌っている。

いきものがかり水野良樹はインタビューで「宇多田ヒカルさんの音楽にはとても深い孤独を感じる。でもその孤独が、他の誰かの孤独を救うことがある気がする」というような話をしていたし、村上春樹は「優れた小説家は人の心の奥深くを流れる地下水脈に小説を書くことで降りていって、その深く暗い場所で読者と繋がることができる」というようなことを度々話している。

「辛いことや悩みはとりあえず忘れてオシャレにパーっとウェーイしようよ」的な表現や創作物を否定する気は無いけれど、そういうのはもうお腹いっぱいだなと思ったハロウィンの夜。